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Google Ad Grantsに「売れるLPの型」は無意味。広告表示を左右する品質フィルタと運用手順
- Google Ad Grants
Google Ad Grantsの導入支援や運用代行をスタートしたのは2018年4月。
そこから数多くの非営利団体様と関わらせていただき、今年で丸8年が経過しました。
これまで2018年、2019年、2021年と、運用の中で見えてきたAd Grants特有の傾向や、直面する壁についてコラムを書き綴ってきました。
引き続き、今見えることを記載させていただきます。
8年に渡って様々なAd Grantsアカウントのデータを見てきて確信しているのは、「Google Ad Grantsは、単なる無料の広告枠ではない」ということです。
本記事では、Ad Grantsを運用する方、運用代行を依頼する方、依頼される方。
多くの方がぶつかるであろう「インプレッションの壁」の正体と、それを乗り越えるために不可欠な「コンテンツの公益性」について、現場のリアルな事例や運用手順も交えて解説していきます。
1.「公益性を理解すること」の難しさ
2021年になりますが、毎月$10,000の助成枠があるにも関わらず「$300/月ほどしか消化できない理由」について触れました。その際、Google Ad Grantsには通常の広告運用にはない「公益性(=公共の利益)」という独自の採点基準が存在するのではないか、という推察を書き記しました。
この推察はGoogle Ad Grantsの公式ヘルプセンターに次のように記載されていることで確信となりました。

“Google 検索の広告オークションでは、Ad Grants に対する品質フィルタが利用されています。このフィルタは、Ad Grants の品質を標準広告と同レベルに維持することで、非営利団体の皆様に引き続き広告(料金なし)と優れたサービスをご利用いただくためのもの“
非営利団体様からご相談をいただく際、「この事業は社会課題を解決するためのものであり、社会貢献性・公益性が高い」という自負を持たれていることがほとんどです。
それは紛れもない事実であり、実際に素晴らしい活動をされている団体様ばかりです。
しかし、いざGoogle Ad Grantsで広告を出稿すると、驚くほどインプレッション(広告表示回数)が獲得できないという壁に直面します。
これはGoogle Ad Grantsの品質フィルタが「その事業、コンテンツの公益性を理解できない」ことにあります。
より正確に言えば、組織や事業そのものが非営利であることと、広告のリンク先となる「ランディングページ(Webコンテンツ)そのものが公益性を有していること」は、全く別の問題として評価されていると体感しています。
たとえ事業の公益性が高くとも、ランディングページが「サービスの案内」や「寄付の募集」にとどまっている場合、Ad Grantsのシステム上では十分なインプレッションを獲得できません。
この「事業の公益性と、コンテンツの公益性のギャップ」に気づき、アルゴリズムに正しく評価される状態を作ることこそが、Ad Grants運用において最も難しく、そして越えなければならない最初のハードルとなります。

2.Google Ad Grantsの「品質フィルタ」を読み解く
前述の公式ヘルプセンターの文言には「Ad Grants の品質を標準広告と同レベルに維持するため」の品質フィルタが存在すると明記されています。
平たく言えば、検索ユーザーの意図に合致して、見やすく使いやすいページであれば評価され、広告は表示されます。標準広告の世界ではそこに「ビジネス」しかなくても、お金を払えばインプレッションを獲得できるオークションの仕組みが成り立っています。
しかし、毎月$10,000の助成枠であるGoogle Ad Grantsにおいては、この「標準広告と同レベルの品質」という言葉の意味合いが少し変わってきます。
利益を目的としたビジネス広告がひしめくオークションの中に、非営利団体の広告を無料で混じらせるわけですから、Googleとしては「ユーザーにとって、標準広告(商用広告)と同等か、それ以上に価値のある(有益な)情報であるか」を判断しているというわけです。
ここで言う「価値」こそが「公益性」に他ならないと私は考えています。
つまり、Ad Grantsにおける品質フィルタとは、通常の品質スコアの採点に加えて「そのランディングページは広く公共の利益に資する情報を提供しているか?」を評価する、事実上の『公益性フィルタ』として機能していると推察しています。
3.ガイドラインから無くなった文言
この「公益性」の判断基準について、興味深い変化があります。
少し前まで、Google Ad Grantsの日本の参加資格要件には、次のような文言が明確に記載されていました。
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“団体のサービスは、何らかの方法で、支払う人だけでなく一般に提供される必要があります”
これは「報酬と対価関係にあるだけの事業取引は対象外である」ということを示唆したものでした。2026年現在、この文言はガイドラインから見当たらなくなっています。
ガイドラインからの削除は一見、条件の緩和を意味しより広告が出しやすくなったのではと思いますが体感としては全く逆です。「非営利団体だから、わざわざ明文化しなくても公益性のある事業やコンテンツを世に出したいのは当然のこと」と考えているのかなと思うほど、従来の考え方で作成したLPなどはインプレッションされなくなりました。
8年の間にAI技術はとんでもなく進化したことに伴ったものか、「ランディングページが広告主とその取引先との対価関係を求めているページか、一般に提供される公益な情報か」を自動的に、瞬時に判別できるようになったからではないかと考えています。
結果として、非営利団体の事業であっても、コンテンツが「閲覧ユーザー個人に直接語りかけ、サービスへの申し込みや寄付を促す」ようなものになっていると、アルゴリズムによって「これは対価関係の取引である」と自動的にスコアリングされ、インプレッションが伸びない傾向が顕著になっています。
このアルゴリズムの変化が、多くのNPOや運用代行者が、従来のWebマーケティングの考え方でGoogle Ad Grantsを運用すると失敗する最大の要因に繋がっていきます。
4.「売れるLPの型」ではAd Grantsで伸びない
「広告運用ってLPつくって広告出していくだけでしょ?」
「うち創れるんで、やってみます」
そんな感じで、ご自身で運用を開始される方も多くいらっしゃいます。
これ自体はとても良いことで、すべての非営利団体様におすすめしたいです。SNSをやる感覚でGoogle Ad Grantsを気軽に運用されることを推奨します。(無料ですし)
その中でも今回は、何度か経験したパターンをご紹介します。
「意味がわからないんですけど、診てもらえますか?」
初めての面談から数か月後、こういうご連絡をいただくことが何度かありました。
取得されたAd Grantsアカウントを見てみると現象はほぼ決まって「インプレッションが数百程度」という状況です。
その広告がリンクしているランディング先を見てみるととても作り込まれたいわゆる「売れるランディングページ」の型に沿って作られたウェブサイトとなっていることがほとんどです。
「売れるランディングページの型」とはつまり
・問題提起
・その問題を放っておくとどうなるか
・うちなら解決できます
・今ならリスクありません
・今すぐこちらからお問い合わせください
といったPASONAの法則に基づいたフレームワークで作成されたものであったり
・サービスのメリットを打ち出し
・それを裏付ける証拠もあり
・競合と違ってこんな良い点がある
・なぜならこんな特徴があるから
・今買わないと損だよ
といった商品販売、ECサイトに代表されるようなフレームワークで作成されたLPでした。
通常の広告であればこういったLPはユーザーの心理に寄り沿ってコンバージョンを獲得していく「失敗しないテンプレート構成」として一定の成果を出せるところからスタートします。
しかし、Google Ad Grantsにおいてこの構成はコンバージョンを獲得どころか、広告が表示されません。
その理由はこうです。
こういったフレームワークで作成されたLPのベクトルは「社会全体に対する公益な情報や問題提起」ではなく、「目の前のユーザー個人へのセールス」を向いており、品質フィルタにそう判定されたからです。
ユーザー個人に「あなたの課題を解決しますよ」と語りかけるコンテンツは、公益でもなんでもなく、取引の呼びかけでしか無いからです。アルゴリズムは「特定の個人と団体との間で行われる対価関係(サービスの提供と享受)」とみなし、広く一般に提供されるべき公益性が低いと判断するのでしょう。

5.「事業の公益性」と「コンテンツの公益性」の乖離
このように、非営利団体として社会課題に取り組むこと(事業の公益性)と、ランディングページで提供している情報(コンテンツの公益性)には、大きな乖離が生まれがちです。
団体としては「一人でも多くの困っている人を助けたい」という純粋な思いでLPを作ります。しかし、そのメッセージが「特定の個人に対するサービスの提供」に偏れば偏るほど、Google Ad Grantsのオークションからは排除されてしまうというジレンマに陥ります。
どうすればいいのか?
Google Ad Grants自体を「広告として見ないこと」から始まります。(無料ですし)
「会員を増やしたい」
「サービスの利用者を増やしたい」
「この商品を販売したい」
動機としては構わないのですが、これを目標にAd Grantsを使うとどうしてもウェブサイト全体が
「サービスの内容や価格」
「サービスのメリット」
「他のサービスとの違い」
といったコンテンツが主体になります。こういった構成だとウェブサイトに公益性を持たせるのは難しくなります。
なのでAd Grants用のLPを構築する際はひとつの考え方として
「この社会問題、今こういう状況である」
「この先〇〇年、放っておけばこういう問題にも波及すると言われている」
「それは〇〇人の人々に▲▲の影響が出ると考えている」
といった非営利団体として向き合っている社会問題をメインテーマにサイトを構成していくことが必要になります。
その上で、
「だから私たちは◇◇の活動をしている」
「今見ているあなたには●●をして欲しい」
といった「ユーザー個人」へのお願いは最後におこなう。前提としてはあくまでも「社会全体」に語りかけていく行為がGoogle Ad Grantsの品質フィルタが評価する『高い公益性を持つコンテンツ』であり、目線を「自分たちが欲しいもの」でなく「社会の何を変えればどう良くなるのか」に着眼していくことがAd Grants運用の成否を決定づけます。
6.インプレッション獲得からコンバージョン最大化へ。
「インプレッションじゃなくてコンバージョンを求めてるんですが」
そういうことを言われることもありますが「インプレッションが流入につながり、流入がコンバージョンにつながる」わけですからインプレッションはすべての源泉なわけです。
売れるLPの型に従ってつくったLPで通常の検索連動広告を出す時は「より少ない予算でより多くの成果を」という基本的な考え方があるのでコンバージョンが何よりも大事なのはわかりますし、通常広告であれば私もその考え方でスタートします。
しかし、Google Ad Grantsをその考え方でスタートするとインプレッションできないところからスタートすることになります。
インプレッションを獲得できる流入窓口を複数作った上で、流入したLPの中でコンバージョンを獲得できるものを取捨選択していくように段階的に考えていきましょう。
改めて公式ガイダンスを見てみましょう。以下のように記載されています。

“「各キャンペーンでは必ず、『コンバージョン数の最大化』、『コンバージョン値の最大化』、『目標アクション単価』、『目標広告費用対効果』のいずれかの入札戦略を使用してください。」”
これを見ると「最初からコンバージョン(成果)を狙う戦略にしなければならない」と思ってしまいます。長年やってきた経験から、これはストレートに受け取らず「最終的にはコンバージョンを狙った入札戦略を使用してください」と解釈するようにしましょう。
必要なのはまずインプレッションです。
KPIから逆算していくことはできません。
Google Ad Grantsの運用では、焦らず「丁寧な運用ステップで確実に段階を踏んでいくこと」が求められます。この段階を飛ばすとほぼ確実にインプレッションしないかと思います。その5つのステップをご紹介します。
1.「クリック数重視」で土台を作る
以前は「クリック単価(CPC)は$2まで」という上限ルールが明記されていましたが、現在はガイドライン上からは見当たりません。ただし、キャンペーン戦略が「コンバージョンを求める以外」の場合に限って、現在でもこの$2の制限はシステム上で適用されています。
まずは$2の制限下であっても「クリック数重視」の戦略からスタートし、インプレッションとクリックがしっかり獲得できる状態を作ります。まずはサイトにトラフィックを呼び込む土台作りです。
2.質の高いトラフィックをコンバージョンとして計測する
クリック数重視のまま、サイトに訪れたユーザーの行動を分析します。例えば「Aというページを〇分以上読んだ」「特定の資料をダウンロードした」といった、団体にとって価値のある「質の高いトラフィック」を、Googleタグマネージャーを用いて、コンバージョンとして正しく計測できるように設定します。
3.「コンバージョン数重視」へ切り替える($2制限の解除)
ステップ2でトラフィックとともに一定程度コンバージョンが取れるようになり、コンバージョンのデータが一定数アカウントに蓄積されてきたところで入札戦略を「コンバージョン数」を重視する戦略に切り替えます。データが溜まっているためアルゴリズムが正しく働きやすくなります。そして、この戦略に切り替えることで、初めて「$2の制限」が解除され、より柔軟なオークションへの参加が可能になります。
4.コンバージョンに「適切な価値」を割り当てる
コンバージョン数が安定して獲得できるようになり、低いコンバージョン単価で獲得できるようになったところで次はそれぞれのコンバージョンに「価値(値)」を設定します。例えば「寄付の申し込み」は価値が高く、「ページの熟読」はそれより低い、といった具合に団体にとっての重要度を数値化し、コンバージョン値が適切にカウントされるようにシステムに学習させます。
5.「コンバージョン値の最大化」へ移行する
最後に、入札戦略を「コンバージョン値の最大化」へ変更します。これにより、Google Ad Grantsのアルゴリズムは単に数を集めるだけでなく、「団体にとって最も価値の高いアクション」を起こしてくれそうなユーザーを探し出し、効率的に広告を配信してくれるようになります。
このGoogle Ad Grantsを長く運用してきて、根強く思うこととしては「Googleはこのプログラムを通じて非営利団体に対し、社会への正しい情報発信者としての役割を求めている」ということです。
単なる無料の広告枠として「自分たちのサービス」をセールスするのではなく、社会が抱える問題そのものを世に問い、啓発していくこと。それが結果として品質フィルタをクリアし、多くの人々の目に触れ、本質的な支援の輪を広げていく最短距離となります。
「事業の公益性」だけでなく、「コンテンツの公益性」を意識すること。 そして、一足飛びに成果を求めず、丁寧なステップを踏んでアルゴリズムに学習させること。
Google Ad Grantsの運用は決して簡単ではありませんが、その壁を越えた先には、団体と社会を繋ぐ強力な架け橋が待っています。
社会課題に立ち向かう非営利団体の皆様にとって、少しでも道をひらくヒントになれば幸いです。当方であれば、公益性を意識したコンテンツ設計から、専門的なツールを用いた緻密なデータ計測、段階的な運用サポートまでトータルでお手伝いできますので、壁にぶつかった時はどうぞお気軽にお問い合わせください。